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ソロデビューするなら。フラメンコを舞台で踊るための心構え

発表会とか、タブラオ(ショーレストラン)での友人企画とか、フラメンコ練習生の方でも舞台に立てる機会が、都内だと結構あります。というかここ数年、すごく増えたなぁと実感してます。タブラオも数が増えたし、平日も営業していて、借りやすくなった。

 

「人様に見せられる踊りじゃないでしょ!」って批判する人もいますが、こうやって誰でも自由にフラメンコを踊って楽しめるようになったことは、私は個人的に良いことだと思ってます。芸術って、アウトプットしてなんぼでしょ!

 

 

どのダンスでもそうだと思いますが、はじめは「群舞」で仲間と助け補い合って、上達すれば「ソロデビュー」しますよね。フラメンコもそうです。上級になると、人と踊る、人に合わせる、ことすら苦痛になってきます(笑)

 

ただし、フラメンコにおける「ソロで踊る」とは、単に人数がひとりになるということではありません。技術以外に身に着けなければいけないことが山ほどあります。

このポイントを大事にする人も、しない人もいますが、

 

真摯にフラメンコに向き合いたいならそこで踊りは天と地ほども変わる

 

という事を、今回はお話したいと思います。

 

 

 

そもそもフラメンコに「群舞」という概念は無い


そもそもフラメンコとは一人で踊るものです。

 

(セビジャーナスやファンダンゴ・デ・ウェルバなどお祭り系の曲を除く)

 

日本でもスペインでも、プロのショーを観に行くと何人踊り手がいたって、踊るのはひとりずつです。

 

「うそだ!数人で踊ってるのを観たことがある!」という方がいましたら、

それは数人で踊れるように振付を作ったというだけです。

 

なぜフラメンコが一人で踊られるかというと、後ろのミュージシャン(ギタリスト、歌い手)と即興でやりとりしているからです。

 

踊り手が指揮者となって、ミュージシャンを牽引し、曲を進行する。よく「三位一体」とか言われてますが、これがフラメンコです。指揮者が二人いたら、どちらに従っていいか周囲は混乱してしまいますね。だから踊り手は一人なのです。

 

 

「即興」で踊るにも「ルール」がある


即興ならば好き勝手してもいいのでしょうか。

 

・・・答えはNOです。

 

ギタリスト、歌い手、踊り手、という相互関係があるからには一定の「ルール」が存在しないと成り立ちません。

 

ここでいうルールとは「一方がこう動くと、他方はこう反応するべきである」という、三者間の共通認識のことです。たとえば

 

・歌ってもらう

・早くする(遅くする)

・リズムを変える

・止まる

 

などの基本的指令は、「きっかけ」を出すことによって(共通認識のもと)周りを従わせることが出来ます。踊りの場合はもちろん動きで「きっかけ」を知らせます。これができるようになることが、まず、スタートラインです。

 

 

つまり、これが今回のテーマの結論にはなってしまいますが、指揮者である踊り手に求められるのは

 

①ルールを正しく理解する

②「きっかけ」を分かりやすく出す

③テクニックを磨く

 

上から、大事な順です。

冒頭でも言いましたが、技術が上達したからといってソロが踊れると思ったら大まちがい。①②なしでは、自分に付いてくれるミュージシャンとコミュニケーションを取ることもできないのです。

 

 

フラメンコは双方向のコミュニケーションである、と心得る


「こんなこと考えなくても、発表会では問題なく踊れてた」

 

と思われるかもしれませんが、だって先生方は「きっかけ」を振付の中に入れてくれてますから。ミュージシャンもプロですから、全神経集中してそのきっかけを拾ってくれてるんです。生徒さんに100%合わせてくれてるんです。

 

重要なのは

 

踊る方が「きっかけ」が「きっかけ」であることに気づいているか。

伝えようとして踊っているか。コミュニケーションを、取ろうとしているか。

 

このポイントを見落としたままでは、ソロどころか、群舞でも「フラメンコ~」の「ふ」の字も薫ってきません。その先にある即興なんて、夢のまた夢です。

 

逆にテクニックが不十分でも、①②が明確だと場は盛り上がるんです。

そこがフラメンコの真髄だからです。

 

 

そしてここに気が付いた瞬間に、フラメンコ探究の道が拓けます。

 

 

そしてその先も、長い、長~い道のりですけどね(笑)

 

 

 

 

お教室の枠、発表会などを超えて舞台に出るということは、他人(先生)の力を借りず、始めましての共演者にも「自分の踊りで」「自分の踊りたいことを」伝える、ということです。

 

先ほども言いましたが、自分自身がきっかけやルールを理解していないと共演者とのコミュニケーションは成立しません。

 

習った振付をどれほど一生懸命美しく踊れるようになっても、それだけではフラメンコになりません。

 

 

と、偉そうに言ってますが自分も通ってきた道です(汗)

 

 

自分が投げたボールに

変化球で返される事だってあります。

 

・・・こう来たか!

さあ、これにどうやって対処しよう。

 

フラメンコの可能性は無限大です。ワクワクしませんか。

 

 

もちろん即興で遊ぶのは相当のレベルに達しないと不可能です。何十年も、一生かけても足りないくらいです・・・!

 

 

ですが少なくとも舞台で踊るのなら、こういったやりとりを歓迎できる心構えをしておくことではないでしょうか。

 

 

自分のやりたいことを伝える。相手から反応が返ってくる。また自分がお返しする。

 

「フラメンコは他者とのコミュニケーションで成り立っている」

 

こう認識するだけで踊りって変わると思います。

 

 

タブラオに出始めの私。すべてが手さぐりの頃(苦笑)
タブラオに出始めの私。すべてが手さぐりの頃(苦笑)